ローカルベンチマーク ~金融仲介機能のベンチマークとの接点~

 ローカルベンチマークと金融仲介機能のベンチマーク、この2つのベンチマークは異なるものではありますが、取引先(中小企業)に対する経営支援や事業性評価というキーワードで相互に関連性があります。

 金融仲介機能のベンチマークの選択ベンチマークには、「ローカルベンチマーク」という言葉が登場します。

選択ベンチマーク5
 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数

 金融庁から提供される情報からは、金融庁が金融仲介機能のベンチマークを設計するにあたって、また金融仲介機能のベンチマークの運用に関してもローカルベンチマークとも整合を図っていこうとする旨がある程度は、伝わってきます。
 

 一方で、経済産業省からは、金融仲介機能のベンチマークの整合や、や事業性評価のツールとしての活用の促進等を図っていこうとする旨の情報発信が乏しい印象です。

 経済産業省のローカルベンチマークのWebサイトでは、「地域企業 評価手法・評価指標検討会」の議事要旨が公開されています。
 この検討会には、金融庁の監督局がオブザーバーとして関与しているということです。

 第5回の議事要旨には、金融仲介機能のベンチマークに関する説明や意見・情報交換が行われた旨が掲載されています。

 例えば、金融庁からのコメントとして、次のような記載があります。

 ”金融の仲介機能の円滑化のために多様なベンチマーク、これは金融当局と金融機関の対話をする際の目安、スタートラインとしてベンチマークを検討するというような事が金融行政方針として定められている。
 本検討会で検討しているローカルベンチマークは金融機関と中小企業との間で対話がされる際に活用されるものであろうと思っている。
 金融庁で検討しているベンチマークは、それを踏まえて金融機関自身がどういう風な対応をしていくべきか議論していくためのものである。
 そういう点では関係が深いものであると考えているが、2つのベンチマークは使う場面および目的が異なる。
 しかし、2つのベンチマークが相反するような状態になると両者とも目的を達すことができなくなってしまうため、両者のベンチマークの検討の方向性は合わせてしていなければいけない。
 金融行政方針は事務年度の方針であるので、今事務年度中にスケジュールを終わらせることを考えている。
 金融庁のベンチマークを検討する際に重要になってくるのが、財務データの中でも生産性の向上及び成長性という観点であると考える。
 各企業の生産性の向上だけではなく、地域における産業全体の労働生産性の向上、企業の成長性などもベンチマークを検討する際に重要なデータとなるだろう。

 そうした説明を受けた上で、ローカルベンチマークの検討会として、「我々が今やっている仕事の中でも共通項があるので、ある程度連携をしていきたいと考えている。」とコメントしています。

 従いまして、ローカルベンチマークの設計にあたっては、金融仲介機能のベンチマークと相反がないように検討されていると思われます。

 しかしながら、これを書いております時点でのローカルベンチマークのマニュアルなど、経産省が公表しているローカルベンチマークの資料等の多くでは、事業性評価についても、金融仲介機能のベンチマークについても言及がありません。

 ローカルベンチマークと金融仲介機能のベンチマークとが、相反しないようにするというだけでなく、相乗効果を生み出すようにして頂きたいと考える者からすれば、不安に思うところがあります。

 経済産業省側と金融庁側が実質的にも積極的に連携し、それがしっかりと伝わるように情報提供して頂きたいものです。

 ローカルベンチマークは、多くの関係者が使われる状況になれば、便利なツール、そしてベンチマークとして機能すると思いますが、普及のための環境が整わなければ、普及に弾みがつくものとはならないでしょう。

■関連リンク
 地域金融機関に期待される役割 (金融庁監督局)

 
ローカルベンチマークと金融仲介機能のベンチマーク
 事業性評価と事業性評価融資

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